8.平成10年代
希少種の保護に向けて(キンシコウ共同研究・ゴリラの繁殖成功)
平成10年代も東山では、希少種の保護・繁殖により力をいれている。
平成12年1月には、中国野生動物保護協会と名古屋市の間でキンシコウ共同研究協議書を締結し、中国国内でも第一級の保護動物として大切にされているキンシコウの10年間の借受けが決まった。
同年4月28日にキンシコウ3頭(ユウユウ、アイアイ、ハオハオ)が来園、その後、平成22年までの10年の間に5頭の繁殖に成功するとともに、行動調査など様々な分野での共同研究の成果をあげるなど国際的な希少動物種の保護に貢献した。
また、平成15年2月27日、ニシローランドゴリラのリッキーとネネの間にアイ(メス)が生まれ、東山で初めてゴリラの繁殖に成功した。母親のネネは推定31歳での初出産であった。
しかし、父親のリッキーは子どもが生まれてわずか5日後に死亡するという不幸があり、残念ながらオス不在のメス3頭だけの群れ飼育となってしまった。
東山動植物園再生プランの始動
平成17年に愛知県で環境博といわれた愛・地球博が開催された。
「自然の叡智」をテーマにして開催された博覧会では、より自然環境の大切さがうたわれた。
東山動植物園ではその基本理念の継承、動物園の役割や使命の変化に対応するため、平成18年6月12日、「東山動植物園再生プラン基本構想」を発表した。
この基本構想は、動物学、植物学、環境学、森づくりなどに造詣の深い13名の有識者の方々と熱心に議論を行い、幅広い分野からの斬新な意見を頂き、取りまとめられたものである。
この基本構想では「生命(いのち)をつなぐ~持続可能な地球環境を次世代に~」という基本理念のもと、6つの基本方針【1.「見るもの」と「見られるもの」の垣根の除去 2.希少動物の「保護」と「増殖」への貢献 3.「娯楽」と「学習」の両立 4.「動物園」と「植物園」の融合 5.「東山の森」と「動植物園」の一体的活用 6.「市民」と「行政」に協働】を定め、動植物を通じて、市民の皆様にいかに楽しんでいただけるか、いかに喜んでいただけるか、いかに感動していただけるかを最優先に考えられたものである。
東山動植物園が都市に暮らす人々の憩いの場であるとともに、自然のすばらしさや大切さを学習し、生物多様性の保全や地球環境の持続につながる場である「人と自然をつなぐ懸け橋」となることを目指すものである。
この基本構想をもとに、翌年には基本計画を策定し、平成20年にチンパンジータワー、平成21年にはニホンザル舎、ゾウガメ舎など新しい施設が次々オープンした。