コモド紀行(1)~野生のコモドオオトカゲに会いたい!~
今から15年ほど前。
動物図鑑を見るのが好きだった私は、ある日、図鑑の中のコモドオオトカゲに出会い、一瞬にして魅せられてしまいました。
全長は約3m、鋭い歯や爪、ごつごつとした鱗状の皮膚...しかも、シカやイノシシなどの大型哺乳類を捕食する...こんな生き物が本当に生きているのだろうか?本物を見てみたい!
しかし、当時の日本には、コモドオオトカゲを飼育している動物園はありませんでした。そこで、コモドオオトカゲはいったいどこに住んでいるのか、調べてみることにしました。
コモドオオトカゲは、インドネシアの小スンダ列島(コモド島、リンチャ島、フローレス島など)にのみ生息しています。日本から見るとおおよそ西南の方向に約5000km進んだところにある島に、コモドオオトカゲは住んでいるのです。
とても遠い...でもいつか行ってみたい...!
その日から、野生のコモドオオトカゲに会うことが、私の夢であり目標となりました。
それから時は過ぎ、昨年の夏に、私は初めて、本物のコモドオオトカゲと出会うことになります。それが、現在東山動物園で飼育している14才のオス「タロウ」です。
タロウが東山動物園にやってくる直前、私は、タロウをもともと飼育していたシンガポール動物園に研修に行きました。そこで初めてタロウを見たとき、とても美しいと思ったことを、よく覚えています。
きれいな流線型の体、堂々としたたたずまい、そしてよく見ると、体の色は黄色っぽい部分や赤色っぽい部分があり、グラデーションのようになっているのです。
写真や映像ではない、本物のコモドオオトカゲを見ることができた喜びと、その美しさに圧倒されたあの時の気持ちを、私は忘れることができません。
タロウが東山動物園に来園してから約1年、試行錯誤しながら飼育をしてきました。
日本の気候や自然環境は、タロウがもともと飼育されていたシンガポールや、野生個体の生息地であるインドネシアとは大きく異なります。そのため、飼育環境の整備は簡単でなく、現在も改善を続けています。シンガポール動物園での研修時に教えてもらったことや、海外の文献なども参考にしながら、タロウにとってより良い飼育環境、飼育方法を、日々模索中です。
そんな中、私は野生のコモドオオトカゲをどうしても見に行きたくなりました。コモドオオトカゲは、どんなところに住んでいるのか、どんな場所を好むのか、気温や湿度はどんな感覚なのか、どんな風に生活しているのか、そのすべてを体感してみたくなりました。
コモドオオトカゲの「本来の姿」を、実際に見て感じて、それを、東山動物園でのコモドオオトカゲの飼育展示に活かしたいと思ったのです。
本ブログ「コモド紀行」では、2025年5月に、私がコモド島とリンチャ島を訪れたときに体感した、野生のコモドオオトカゲとその生息環境、そこに住む人々の生活やコモドオオトカゲとの関わりなどを、写真や動画を交えて紹介したいと思います。
遠いインドネシアの島々や、そこに住む巨大なトカゲに、思いをはせてもらえたらうれしいです。
動物園 川島