Now Loading...

Now Loading...

サイト内検索

文字サイズ

オフィシャルブログ

ツシマヤマネコ「したる」のまとめ

2023年08月24日(木)

ツシマヤマネコは環境省の保護増殖事業計画に基づき、その一部をJAZA(日本動物園水族館協会)が委託され、東山動植物園で繁殖の取り組みが実施されています。

そのため、毎年繁殖の成果を成否問わず報告書にまとめており、今年は繁殖成功の報告と人工哺育の報告の2本立てで、報告書作成のための事務作業が大変でした(関連した事務作業がまだ他にもあって全体としてはまだ終わっていないですが...)。

まだ、それらの報告書をまとめたりするJAZA生物多様性委員の役割を持つ職員に比べれば微々たるものなのが恐ろしい。。。

今回はせっかくまとめたのでブログにも転用しようと言う考えです。長くなりますが、興味のある方はお付き合いください。

※ブログ・YouTubeなどのリンクも見てみて下さい。

No.103したる.jpg



2023年4月23日に「勇希」(オス)と「レイラ」(メス)の2産目・第3子として誕生。「レイラ」は1産目を帝王切開で出産していて、今回こそ自然分娩を!と目指していたものの再び帝王切開→人工哺育となりました。

昼夜問わず3時間おきに哺乳するため、飼育担当以外の飼育員の協力も得て6名体制で実施しました。実施人数は練度の維持の関点や感染症リスクの関点から過去の人工哺育事例を踏まえ今回の人数となっています。
猫用ミルクに加え、生後2日目までは初乳を飲ませています。手術後の「レイラ」を保定した状態で授乳させるため1日2回の合計4回までとしました。2産目ということもあり母乳も良く出て、少量ですが大学での研究用サンプルも取ることができました。

【youtube「ツシマヤマネコの赤ちゃん~母親レイラからの授乳と飼育員による哺乳の様子~」】

15日齢で開眼しキトンブルーの青い目があらわになりました(ひと月ほどで黄色いヤマネコの目になります)。この頃から保育器の外でも過ごすようになります。

【youtube「ツシマヤマネコの赤ちゃん~生後15日目:飼育員による哺乳~」】

23日齢で切歯、犬歯が萌出してきて乳首などをかむようになってきたので順に離乳食を開始します。

【youtube「ツシマヤマネコの赤ちゃん~生後22日目:初めての離乳食~」】

今回の哺乳では過去の人工哺育事例を踏まえ哺乳量の調整をおこなった結果、哺乳状態、便状が常に良好で全く手のかからない哺育となりました(びっくりするほど何もなかったです)。

34日齢で哺乳は終了し、35日齢から離乳食のみとなりました。この時の体重が416g(誕生時の4倍)まで大きくなっていますが、離乳では今回初めて手間取りました。その後はまた順調に成育し、ワクチン接種(1回目)の後に動物病院からツシマヤマネコ舎へ移動し、ワクチン接種(2回目)終了後はパドックの利用を開始し、人工哺乳が完了しました。

【youtube「ツシマヤマネコの赤ちゃん【したる】~バックヤードで元気いっぱい~」】


現在は親同様の飼育管理をしており、体重も2㎏を超えました。たまに「レイラ」たち大人と顔を合わせています。
ただ、単独人工哺育個体はどうしても社会性が身に付きません。そのため複数の産仔があった場合は、幼獣同士を集めてミキシング(同居飼育)をおこなうことでそれを補います。2021年によこはま動物園で産まれた「ひい」や2022年に福岡市動物園で産まれた「つむぎ」に対してもおこなわれています(2021年は当園で実施しています)。

【youtube「ツシマヤマネコ4頭の同居トレーニング。ついに、ひいが動きました!」】

ですが、今年は「したる」のほかに仔がいませんので、さてどうしたものか悩ましいところです。

今までのツシマヤマネコ飼育の積み重ねから、なるべく早い段階でフラッディング(新しい刺激・環境に「安全だと」長時間経験させることにより嫌悪環境を好環境に転換する方法)することが、飼育下での繁殖に寄与する個体の育成に繋がると考えられます(特に単独育成の「したる」には重要な経験と考えます)。

と言うことで、8/29より「したる」を公開することとなりました(屋内への出入りは自由となりますので、パドックへ出てくるのかは本人次第になりますが)。
展示期間は1ヵ月で、2021年の時のように時間制限ありの2日間だけというわけではありません。「したる」に一目会いたいという方は慌てる必要はありませんので安心してください。

今回の公開の目的は、あくまで「したる」への飼育下繁殖個体としての育成の一環ではありますが、元々ツシマヤマネコの普及啓発としても大きな意味を持ちます。実際に「したる」をみていただくことで、愛称に込めた思いを汲んでいただければと思います。

【ブログ「ツシマヤマネコの仔2023」】


そのうえで、さらにツシマヤマネコについて知りたいと思われた方は下記のサイトをご参照いただければと思います。

環境省_希少な野生動植物種の保全(リンク)保全

対馬野生生物保護センター(リンク)

NPO法人 どうぶつたちの病院(リンク)

また、当園同様に名古屋市の施設である名古屋市科学館では9/18まで特別展「ネコ」~にゃんと!クールなハンターたち~が開催中です。ツシマヤマネコなどネコ科動物全種について学べる貴重な機会となっております。ツシマヤマネコの毛皮に触れたり、尿のにおいを嗅ぐことのできるコーナーなど体験型の展示もありますので併せていかがでしょうか。名古屋市は今年偶然にもネコだらけな一年です(笑)

名古屋市東山動植物園はツシマヤマネコのほか、イタセンパラ、ネコギギ、アカハライモリ渥美種群などの希少野生生物の保護増殖に関する事業に協力しています。

"日本のいきもの"もオススメですよ。

動物園飼育第一係 加藤 俊紀

ブログ一覧へ戻る

最新の記事

カテゴリーリスト

top