ツシマヤマネコの仔
4月30日に産まれたツシマヤマネコの仔の人工哺育も落ち着いてきましたので、ここらで一つご報告を。
【5月1日[1日齡]シリンジ哺乳】
今回の出産は当園としては4回目、母親のレイラにとっては初めてになります。
帝王切開になってしまったので、母親が育てる「自然哺育」が叶わなかったことは無念で力不足を痛感しておりますが、4回目にしてついに元気な赤ちゃんの姿を見ることができました。
これも5月15日の園長ブログにあるとおり、当園職員の他、環境省、(公社)日本動物園水族館協会(JAZA)、岐阜大学動物繁殖学研究室等の協力機関の皆様のお力添えと、当園でのツシマヤマネコの繁殖を応援してくださった皆様方のおかげです。ありがとうございます。そしてお待たせしました。
【5月5日[5日齡]爪切り】
令和3年のツシマヤマネコ飼育下個体群の繁殖は、福岡市動物園1頭、よこはま動物園ズーラシア1頭、当園2頭の合計4頭という結果になりました。4頭ではありますが、同年に3ペアから仔を得ることができたということは、ツシマヤマネコの域外保全(飼育下個体群)にとっては大変喜ばしいことです。
ツシマヤマネコの域外保全では「遺伝的多様度」を重要視していて、つまりは多くの個体から仔を得ることで、多くの様々な遺伝子をグループの中に残すことを目標としています。なので、少数のペアから多くの子孫を得るのではなくて、多数のペアから均等に子孫を残す必要があります。
【5月15日[15日齡]開眼完了】
そんな中、今回の3園館の繁殖はそれぞれ違う意義を持った仔が産まれ育っています。
【5月23日[23日齡]歯牙萌出】
【5月24日[24日齡]トラ寝】
当園の仔は、父親の勇希が人工哺育で育った個体で、ツシマヤマネコにおいて初の人工哺育個体から繁殖した個体となります。他種の話になりますが、人工哺育個体は同種の相手に対して繁殖行動を行わない例があります。今回勇希が相手のレイラに対して交尾行動をきちんと行うことができたのは、勇希の出生園である京都市動物園のチームの人工哺育が素晴らしいものであったことを示しています。
当園の仔も京都市動物園の例(勇希および優芽)を参考に人工哺育をしています。人工哺育では、自然哺育と違い通常知ることのできない多くの成育データを取ることが可能で、今回までに京都、よこはま、名古屋と3事例5個体の成育記録を取ることができ、今後も例数が増えることでツシマヤマネコの繁殖に寄与することとなると思います。
【5月31日[31日齡]待機中】
当園の仔の性別が判明したので、第1仔オス「さご」、第2仔メス「さすな」、どちらもツシマヤマネコの生息地である対馬の佐護地域、佐須奈地域を由来としました。
「さご」、「さすな」を応援してくださる際に、対馬にいる野生のツシマヤマネコたちにも思いを馳せていただければ、という思いでつけました。
【6月8日[39日齡]2人遊び】
動物園飼育第一係 加藤 俊紀