オランウータンの新エンリッチメント
2014年07月01日(火)
動物園では、限られた飼育空間の中で動物の福祉と健康の増進を図るために、様々な刺激や色々な選択肢を動物に与えて行動の多様性を引き出す試みをしています。
一口にエンリッチメントと言っても、エサの種類を増やしたり与え方を工夫したりする採食エンリッチメント、飼育空間にロープなどを張ったりタワーのような構造物を設置したりする空間エンリッチメント、複数頭もしくは群れで飼育したり別種と混合で飼育したりする社会的エンリッチメントなど、その方法は多岐にわたります。
今回は、大学院生と共同で研究中のタブレットコンピュータを用いたオランウータンの認知エンリッチメントについて紹介します。
認知エンリッチメントとは、簡単に言うと動物の知性を刺激して行動を促すエンリッチメントです。
認知エンリッチメントを行うために、オランウータンへ刺激を与えるとともにそれに対するオランウータンの反応の受け皿ともなるタブレットコンピュータを2台、オランウータン舎内の大きい部屋(夕方にメスのネオがいる部屋です)に設置しました。
オランウータンがタブレットコンピュータに触れるとその触り方に応じた反応をタブレットコンピュータが返します。
その反応に対してオランウータンが興味を持てば、引き続き触り続けますし、興味を失えば触るのをやめてしまいます。
それぞれの刺激に対してオランウータンがどう反応したかを記録・分析して認知エンリッチメントの質の向上を図ります。
毎日行うと彼女たちが飽きてしまうので、タブレットコンピュータは日にちや時間を決めずに起動します。
彼女たちがタブレットコンピュータに向かっているところを見ることが出来たら、ラッキーですよ!
是非立ち止まって観察してみてください。
動物園飼育第二係 木村 幸一