【水の中の出来事】オオサンショウウオの未来について
2024年05月21日(火)
東山動植物園の自然動物館では、国産のオオサンショウウオと中国の固有種であるチュウゴクオオサンショウウオを並べて展示しております。
【オオサンショウウオ】 |
【チュウゴクオオサンショウウオ】 |
展示しているチュウゴクオオサンショウウオは、京都市の鴨川水系において捕獲された個体です。なぜ、日本の河川にチュウゴクオオサンショウウオがいるのでしょうか。1960~70年代に食用などの目的で当時は合法的に輸入されたものが、川に逃げ出したり捨てられて生き残っていたのではないかと考えられています。そのチュウゴクオオサンショウウオが国産のオオサンショウウオの繁殖場所や餌を奪っている可能性が考えられる上に、更に、チュウゴクオオサンショウウオとオオサンショウウオが繁殖できたために、交雑個体がたくさん見つかる結果となりました。交雑が進むことにより、在来種の本来の遺伝的特徴が失われ、純粋な在来種のオオサンショウウオが将来いなくなってしまうことが心配されています。
東山動植物園では、愛知県瀬戸市の蛇ヶ洞川に生息するオオサンショウウオの調査に協力しております。私も昨年度調査に参加させていただいて、野生のオオサンショウウオと関わる貴重な機会をいただきました。ただ、残念ながら瀬戸市の蛇ヶ洞川でも交雑個体が確認されてしまいました。
【瀬戸市で捕獲され和歌山県立自然博物館で展示された交雑個体】
6月2日(日)には、鍋屋上野浄水場にて名古屋市上下水道局主催の「なごや水フェスタ」が開催されます。その中で、私も「水にまつわる動物のおはなし」というタイトルの動物講座の講師を担当させていただきます。オオサンショウウオのおかれた現状もお話しさせていただきます。他にも楽しいイベントがございますので、ご興味のある方は「なごや水フェスタ」にご参加いただいたいと思います。
日本のオオサンショウウオの未来が心配されますが、オオサンショウウオの問題が、みなさんに、外来生物、希少動物の保全、生物多様性の維持について考えていただくきっかけになると良いのかなと思います。
動物園 白木