サバンナの思い出(10)最終回
2023年03月23日(木)
2004年に訪れたケニア共和国の思い出をまとめたアフリカ紀行の連載の最終回です。今回は旅の帰り道で念願のサバンナ動物に会えました。
東アフリカへ行くと 「ビック5はもう見たかい!」といった会話を耳にすることがあります。 かつては、ソウ・ライオン・ヒョウ・サイ・バッファローといったハンティングの獲物ベスト5を指していました。現在は「撮るサファリ」なので、"バッファロー" の代わりは"チーター"です。現代版ビック5は、見たい・会えたら嬉しい動物のベスト5なのです。 今回のサファリツアーで会えた動物数は哺乳類23種、鳥類21種、爬虫類2種にのぼりましたが、ケニア滞在も最終日となり、私には心残りが二つありました。一つは強風のため中止となった熱気球でのバルーン・ サファリ、もう一つはビック5の"ヒョウ"にまだ会えていないことです。「サバンナの忍者」の異名をもつヒョウはここマサイマラで最も見ることが難しく、現地のガイドさんでも月に一度くらいしか見られないそうです。 理由は彼らの習生にあります。ヒョウは夜間によく活動し、昼間もサファリ・カーでは近づきにくい、森や岩場など起伏の多いところを好みます。さらに単独行動が多いのでよけいに見つけにくいのです。
少し後ろ髪をひかれる思いで帰路につきました。途中で自分より大きいエランドの死骸を運ぶライオンに遭遇しました。 しばらく走ると、何台ものサファリ・カーが、一本の樹木の周りを取り囲んでいました。念願のヒョウとの出会いの瞬間でした。下に垂らした尻尾だけが時々動いていました。何度も図鑑や映像で見たあの樹木の横木でくつろぐヒョウが目の前にいました。改めてその"ヒョウ柄"の美しさと斑点模様の意味を理解したような気がしました。 木枝の隙間からの太陽の木洩れ日 にヒョウの毛皮の模様が見事なカモフラージュを果たしていました。ガイドさんによれば、自分の身を守るため、位置を知らせないために同じ木では決して休まないそうです。 サバンナの忍者はあくまで用心深く慎重です。
360度の地平線。 真っ青な空にポッカリ浮かぶ白い雲。 サバンナを吹き抜ける乾いた草の臭い。 この肌で感じる空気感こそがアフリカの醍醐味だと思います。この素晴らしさは文章や写真だけでは十分に伝えられません。ぜひ、生息地に訪れることをお勧めしたいです。
現在、東山動植物再生整備プランが進んでいます。開園100周年となる令和18年の完成を目指している長期プロジェクトです。このなかには新しいサバンナ・エリアの整備計画も含まれています。私のサバンナでの経験が少しでもお役に立てればとの想いで綴ってきました。恒例の春まつり(3/18〜5/7)も無事にスタートし、話題のホッキョクグマのフブキも元気一杯です。桜も3月17日に開花しました。この機会にぜひご来園下さい。これからも東山動植物園をよろしくお願いします。
◎春まつりはコチラ
動物園長 黒辺 雅実