初夏のハイドレンジア
ハイドレンジアは、英語で「アジサイ(紫陽花)」を意味する語です。また、アジサイ科アジサイ属の学名をHydrangeaといい、これはラテン語読みをした場合「ヒュドランゲア」と発音される? 『水』の意味です。
アジサイの花言葉は、「移り気」「無常」などで、花の色が時期によって変化することから付けられているのでしょう。また、「冷淡」「高慢」なども聞きます。
気象庁は14日、東海地方が梅雨入りしたとみられると発表しました。
6月から7月、ちょうど梅雨の時期にアジサイは見頃を迎えます。
植物園でもアジサイ園をはじめ、至るところで見頃を迎えています。
アジサイについて
アジサイの花は、大きく見えますが、小さな花が集まったもので、花には「装飾花」と「両性花」の2種類があります。花の中央にある両性花は粒状のもので、「おしべ」と「めしべ」があり、種ができます。
外側にある装飾花の花びらのように見えるところは「蕚片(がくへん)」で、中心に「おしべ」と「めしべ」がありますが、不完全で種はできません。
【中央が両性花、外側が装飾花】
アジサイの花の咲き方
咲き方は、「ガク咲き」と「テマリ咲き」の2種類があります。
ガク咲きは、中央の両性花を装飾花が額縁のように囲むように咲くものです。
【ガク咲き/日本庭園】
テマリ咲きは、装飾花が球形に集まり、まさに手毬(てまり)のように咲くものです。
花の色
花(蕚片)の色は、アントシアニンという色素によるもので、アジサイにはその一種のデルフィニジンが含まれており、これに補助色素とアルミニウムが加わると、青色の花となります。アジサイは、土壌のpH(酸性度)によって、花の色が変わり酸性が高ければ青、アルカリ性が高ければ赤になります。
植物園では、様々な色の花を見ることができますが、どちらかというと青色が多いのかなと思います。
また、植物園では万葉の散歩道を整備しており、万葉集に詠まれる樹木、草木を植え、歌碑、歌看板を設置しています。日本庭園には、万葉の散歩道の和歌28番目の
「紫陽花の 八重咲く如く 弥(や)つ代(よ)にを いませわが背子(せこ) 見つつ偲(しの)はむ」
と詠んだ、橘諸兄(たちばなの もろえ)巻二十・4448の歌碑が設置してあります。
現代語訳では、「アジサイが八重に咲くように、いよいよ長い年月を生きてください、あなた。アジサイを見ながらあなたをお慕いしましょう。」です。
【28番目の歌碑 橘 諸兄(たちばなの もろえ)が詠んだ和歌】
アジサイは、原種として日本に自生していました。古く日本から中国へ伝わったものが、18世紀にさらにヨーロッパへと持ち込まれ、多くの園芸品種がつくられました。
伊藤圭介翁の先生であるシーボルトもアジサイをオランダに持ち帰ったのでないかと想像してしまいます。
【アジサイ園にある樹名板 アジサイ'七段花'(シーボルトの「日本植物誌」だけに掲載】
アジサイに興味のある皆さまは、是非とも「古今」「和洋」を思い・感じながらアジサイをご観賞ください。
皆さまのご来園を心よりお待ちしております。
〇お知らせ〇
植物園では見ごろの植物の情報を花マップで提供しています。
ご来園の際はぜひご利用ください。
植物園緑地造園係 石川 和之