メダカクエスト2、そして伝説に...
令和3年の春まつりも無事に終了しました!大団円!
期間中、ご来園をありがとうございました。
なんといっても盛り上がったのは今年の3月にオープンしたばかりのレッサーパンダ舎!
そして、植物園では重要文化財温室・洋風庭園がリニューアルオープン!
なかなか話題の多い春まつりだったように思います。
新しく東山に仲間入りしたレッサーくんと一緒に、園内の絶滅危惧種の動物をまわるという内容でした。
実はレッサーくん、つまりシセンレッサーパンダも絶滅危惧種なんですよー!なんだってー!
さて、そんな春まつりの中でひときわ異彩を放ち、一部で話題となっていたのがこれ。
「メダカクエスト2」です。
東山動植物園でとてもたくさんのメダカがみられること、知っていましたか?
メダカの仲間は現在37種が確認されているのですが、当園の「世界のメダカ館」ではなんと30種を飼育!
展示も28種、超絶多い。世界のメダカ館は伊達じゃない・・・!
さらにこの春、さりげなくリニューアルをしているんです。
解説展示などをより親しみやすく分かりやすいものに変更したほか、館内の全体レイアウトを見直して、よりメダカ科の魚にフューチャーした展示になりました。
また、近年新種として認定された超希少なティウメダカ、ドピンドピンメダカも常設展示として見ることができるようになっています。
さ・ら・に!世界最大級のメダカの仲間であるポプタメダカを初公開!
ポプタさん近影
この子は現在、日本の動物園水族館ではここでしか見ることができません。大きくて見ごたえありますよ。
このリニューアルによって、もともと全世界でも類を見ないメダカ特化型施設である「世界のメダカ館」がさらなるパワーアップを遂げたのです。これであと十年は戦える・・・!
ほんとに、本当に素晴らしい施設なのですが・・・大きな弱点が。
ま だ ま だ 知 名 度 が 低 い ん で す 。
何度も園に足を運んでいる方からも、「行ったことない」「え?リニューアルしたの?」という声がちらほら。悲しみ。
東山動植物園は有名な動物が多いですからね。
レッサーパンダ・・・
フクロテナガザルのケイジ・・・
つよい。
かてない。
そんな逆境のなか、少しでも「世界のメダカ館」とそこにいる淡水魚たちに興味を持ってもらいたい。
そう思い立ち、企画したのが「メダカクエスト2」です。
おそらく東山動植物園史上初となるナンバリングイベント。無印は2019年、今から2年前に開催されました。
プレイヤーが勇者となり謎を解き明かしてメダカを救うというストーリーで、元凶の「ムカンシン」という名前に風刺がきいていると話題になりました。僕の中で。
今回のメダカクエスト2は前作の世界観そのままに、無印のその後を描きます。
平和が戻ったはずの水辺でまたしても事件発生、メダカが次々と消えて他のそっくりな魚に入れ替わっているというのです。
謎を解きメダカを救うため、勇者は再び立ち上ります。
勇者のもとには伝説のアイテムと新しい仲間。
勇者の前に立ちはだかるのは5つの試練。
そして勇者を待ち受ける衝撃の真実。
果たしてメダカを危機に陥れているものとは・・・?
勇者はメダカの聖地へたどり着けるのか・・・?
現在社会に善と悪を問う、衝撃の問題作となりました。悲しいけどこれ、戦争なのよね!
今作も難易度を高めにしたので、難しい!という声がちらほら。
リニューアルしたばかりということもあり、謎を解くために館内の展示をじっくり見てもらうのが主な狙いでした。
そして、コロナ禍の感染予防を意識してペンやスタンプを使わない方式にしたもの特徴です。このおりがみ式のウォークラリー、流行らないかなぁ。
無印を踏襲しつつも新要素を加えて、新たな環境問題への問題提起もできた、正しくメダカクエストの正統続編に相応しいイベントだったと自負しております。
ご清聴ありがとうございました(満足)
このメダカクエスト2もなかなかの反響があり本当に多くの方に参加をしていただけました。
あんなに「世界のメダカ館」に人が滞留していたのは初めてだったかも。こんなに嬉しいことはない・・・!
さて、お待ちかねの「メダカクエスト2」の回答と解説をさせていただきます。メダカ、いきまぁす!!
まず1の試練、写真を見てメダカとメダカでない魚(カダヤシ)を見分けるというものでした。
シンプルに見えてこれが意外と難しい!
ガチ勢はぱっと見で分かったと思いますが、多くの皆さんが最初は頭を抱えたんじゃないでしょうか。
しかし、もしメダカに詳しくなくても3つのヒントをもとにすればメダカは「A」であることが分かるようにしました。
ヒント1、外見のおヒレに注目。
メダカは角ばった台形のような形をしているのに対して、カダヤシはうちわのような丸い形をしています。
ヒント2、水温に対する違い。
カダヤシはメダカに比べると寒さに弱いんです。暖かい地域に生息する魚ですからね。
ただ、昨今の温暖化の影響で、寒さに強いという日本におけるメダカのアドバンテージが失われつつあるとか。
そういったこともカダヤシが生息数を増やしている一因となっているのかもしれません。
最後のヒント3、これが一番分かりやすいですね。メダカが卵を産むのに対して、カダヤシは子どもを産むんです。
え?魚なのに子どもを産むの?と思うかもしれませんが、厳密に言うと「卵胎生」といってお腹の中で卵をふ化させて子どもを産むという形態をとります。
魚類ではサメやエイの仲間などに見られます。子を産む方法も様々。生き物って面白いですね。
続いて2の試練、これは特定外来生物を見つけるというものでした。
特定外来生物とは・・・
【生態系等に係る被害を及ぼし、又は及ぼすおそれがあるものとして、外来生物法によって規定された外来生物。生きているものに限られ、卵、種子、器官などを含む。同法で規定する「外来生物」は、海外からわが国に導入されることによりその本来の生息地又は生育地の外に存することとなる生物を指す。】
ざっくり言うと、外からきてその場所の生態系を荒らしちゃう恐れが強い生き物のことです。オオクチバス(ブラックバス)やブルーギルが有名ですよね。
それに該当する動物が「アクシスジカ」「アライグマ」「カミツキガメ」「ウシガエル」となります。
カミツキガメやウシガエルはなんとなく分かりますが、アクシスジカ、そしてアライグマまで特定外来生物というのがちょっと意外ですよね。ロックリバーへ・・・
そして、それぞれの文字を並べると、この試練の答えは「ザリガニ」となります。
続いての3の試練は、伝説の鏡の封印を解くというもの。こういうの、RPGっぽくて好きなんです。
問題としては8つあるメダカにまつわる雑学から2つのウソを見つけるというものでした。
ひとつは「海水では生きられない」、これが誤りです。
淡水魚としてのイメージが強いメダカですが、川と海がまじりあう汽水域や海水域にも生息しています。
メダカの祖先は海水魚と考えられており、分類を見ても、実はサンマやトビウオなどに近いんですよ。
もうひとつの誤りは「水に流されるように泳ぐ」こと。
イメージすると分かりやすいですが、体の小さなメダカが流されるようにして泳いでいると、あっという間に最下流まで流れ着いてしまうと思います。
本当は逆で、メダカは水の流れに逆らうようにして泳ぐのです。流されないように必死に泳ぐ姿を想像すると健気で可愛いですよね。
この2つがウソなので、この試練で導かれる印は「丸とクローバー」でした。
ここで注目してもらいたいのが、ウソではない他の6つ。これらは全て本当の雑学なのです。
変り種のネタとしてはメダカが夏の季語ということでしょうか。そういったことからも、昔から日本に根付いた、馴染の深い魚であることが感じ取れて面白いですよね。
そして、ほら、いつの間にかメダカにほんの少し詳しくなれたんじゃないでしょうか?
これこそがこのクエストの醍醐味です。
お次は4つ目の試練・・・といきたいところですが、その前に小さなナゾ。スラウェシの森(実在するスラウェシ島をもじりました)にある石碑の文字を解読するというものです。
これは簡単で、鏡に写したつもりで逆さまに読むと「オイカワニキケ」と読めます。
実は3の試練でゲットした鏡を使いたかったので無理やり入れ込んだナゾです(制作裏話)。
オイカワは繁殖期になるとオスが鮮やかな体色に変わることで知られています。世界のメダカ館ではメダカの仲間以外に、こういった日本の河川に生息する淡水魚も展示をしているのです。
そしてオイカワが案内してくれた先で姿を現すのが、今回の事件の黒幕「ドーニュー」。
ドーニューさん近影
人の悪しき思念の集まりであり、カダヤシをメダカの生息域に連れてきた張本人です。
「ドーニュー」は漢字で書くと「導入」、様々な形で人為的に生物が運ばれ野外に放たれることを指します。
「導入」こそが外来生物問題の原因であり、こういった問題は元を辿れば結局人間の行動にたどり着くということを匂わせています。得意の風刺を一つまみ。
4の試練は「ドーニュー」の出した3つのなぞなぞに答えること。
物語の最高潮ということもあって、このなぞなぞの難易度はかなり高め。あちこちから難しい!という悲鳴が。計算通り(にやり)
鏡でヒント(となる魚)を示唆することによって、少しマイルドに仕上げました。最終的には解いてもらわないと意味がないですからね。
なぞなぞ①
法則を見つけて、魚の名前に該当する文字を当てるという問題。
ミナミメダカが「に」、ティウメダカが「い」、ハイナンメダカが「ち」...これだけだと超絶難しいので、ヒントとしてマスがどこかで見たことがあるような模様になっています。
模様...そう、国旗です。この文字は魚の主な生息域の国を表しているんです。
ミナミメダカが日本、ティウメダカがインドネシア、ハイナンメダカが中国、で右の文字はそれぞれの国名の頭文字を表していることが分かります。
カダヤシが主に生息する国は国旗からも推理できますが、ずばりアメリカ!UUU・USA!UUU・USA!カモンベイビー!
よってなぞなぞ①の答えは「ア」となります。
なぞなぞ②
更に難易度があがります。これも法則を見つけて、今度は難読漢字に該当する文字を当てるという問題。
何のヒントもなくこれらの漢字を読めたとすると、もはや漢字ハカセですね。
一応、漢字が水の中にあるので、全て水中の生き物の名前を指すことが分かります。
孑孑は「ボウフラ」、水?(環境依存字)は「ヤゴ」、蛞は「オタマジャクシ」と読みます。
そして、もう一つポイント。矢印に注目をしてもらうと、それぞれの生き物が水から上がっていることが分かります。
ここまできたらおそらくピンとくると思います。これらの生き物の共通点は「成長すると水から上がって名前が変わる」ことなのです。
ヤゴはトンボになり、オタマジャクシはカエルになり、そしてボウフラは蚊(カ)になります。
文字は成長後の名前の頭文字なので、なぞなぞ②の答えは「カ」となります。
なぞなぞ③
文字を推理する前二問からは打って変わって、今度はアルファベットから仲間外れを見つけるという問題。
ポイントは英語のENDANGERED SPECIES。これは絶滅危惧種を指します。つまりアルファベットから絶滅危惧種に関係のないものを探せば良いことになります。
絶滅危惧種に関連のあるアルファベットといえば...そう、カテゴリーです。
絶滅危惧種のカテゴリーは3つ、CR(絶滅危惧IA)・EN(絶滅危惧IB)・VU(絶滅危惧II)となっており、これらのアルファベットを除くと仲間外れはZとAということが分かります。
よってなぞなぞ③の答えは「ざ」(ZA)となります。
これでなぞなぞの答えが全て出揃いました。あとは文字を並べてみれば...
「アカザ」は上弦のさ...ではなくて、ナマズの仲間で日本の固有種である淡水魚です。
背びれや胸びれにとげを持つのですが、身近な魚ということもあり、幼少期に刺されたことがあるという方もいるかもしれません。
このアカザが弱点を教えてくれて、「ドーニュー」を討伐、4の試練はクリアとなります。
そしてグランドフィナーレ、最後の5の試練はその名も「属の名は...」。どこかで聞いたことがあるかもしれませんが気のせいです。入れ替わってません。
カダヤシの仲間である3種の魚の属名を調べて手紙のヒミツを解くというものでした。
3種の名前はそれぞれ、ノトブランキウス・フォアルシ、アフィオセミオン・ボルカヌム、アメカ・スプレンデンスでした。あかん、舌噛みそう。
とても難しい属名ですが、全てカダヤシの展示室で展示をしている種ですので、しっかり見て回っていただければ必ず解ける問題だったと思います。
そして、それぞれの属名から指定の一字をとって「スミカ」という単語を作り、手紙のなかからのそのキーワードを見つければ無事解決です!
さて、ここで注目して欲しいのが、この問題に登場した3種。実はカダヤシの仲間でありながら全て絶滅危惧種!
カダヤシと聞くと、外来種というイメージであまり良い印象を受けないかもしれませんが、生息域では絶滅の危機に瀕している種もいるんだよ、という気付きを提供したかったのです。
イメージだけで忌み嫌うのではなく、それについての正しい理解を深めることが大切です。何にでも言えることですけれどね。
そして、たどり着いたメダカの聖地
それは「たんぼ」でした。
おりがみ式のクイズラリーの真骨頂。最後にキーワードが浮かび上がってスッキリ。流行らないかなぁ。(二回目)
長々と回答編を失礼しました。未参加の方もこんな雰囲気でやっていたんだなくらいに思っていただければ幸いです。
今回はやはり4の試練、「ドーニュー」とのクイズ対決が難しいと評判でした。
個人的には3の試練が好きなんですけどね。封印の鏡とか、謎の歌とか、厨二感があって良い。
何にせよ、遊びと学習のバランスをとることや難しさの調整を考えるのが結構大変でした。
こういったクエスト形式の企画を考えている方は参考にしてください。あんまりいないと思うけど。
あと、声を大にして言いたいのは、正解の「たんぼ」に秘められた意図です。
これがクエストの核と言っても過言ではありません。
メダカは流れの早い川や大きな湖などには生息できません。
流れの早い川では小さなメダカはすぐに流されてしまうし、大きな湖にはメダカを捕食する大型の魚などがいるからです。
そんなメダカたちにとって流れが緩やかで水深の浅い田んぼは、非常に棲みやすい環境。まさに聖地..."でした"。
実は田んぼを取り巻く事情が大きく変わっているのです。
メダカは昔から春~秋は田んぼで産卵や子育てをして、田んぼの水がなくなる冬は近くの小川や池で冬ごもりをする、というサイクルで暮らしてきました。
しかし、管理しやすいように整備された田んぼは、用水路との間に高低差があり、メダカが田んぼに登ることが難しくなっています。
また、用水路の流れが早く、メダカがその場に留まれないという問題もあります。
つまり、最近の整備された田んぼはメダカが生息しずらい環境になってしまっているのです
開発等により田んぼが数を減らしていることはよく耳にしますが、実は田んぼの形態が変わっていることもメダカの生息域をせばめている原因となっているのです。
われわれに身近であるがゆえに、われわれの生活様式の影響を大きく受けるメダカ...
彼らとこれからも共に生きていくためには、やはり彼らのことや彼らを取り巻く環境について、正しい理解を深める必要があるのです。
もちろん、この地球上で生きるどの動植物に対しても言えることなんですけどね。
メダカクエスト2の「田んぼ」というコタエをきっかけに、そういったことに思いを馳せていただけるとありがたいです。
さて、企画者のくだらない語りはこの辺りにして。
今後もこういった企画を立案出来たらなと思っております!
...さてさて、気が付きましたか?
最後の大しかけ。
実は今回のブログの構成は前回のメダカクエスト無印の回答編を踏襲しております。
デジャブを感じたとしたら、そのせいです。
思いが強すぎて回答編がくどくなりすぎた感は否めませんが、前回のブログと見比べて、変わった点、変わっていない点を探してみるのも楽しいかもしれませんね。
これからも東山動植物園、そして「世界のメダカ館」をよろしくお願いいたします。
うっす。
管理課業務係 石川 恭之