特別公開「東山動物園猛獣画廊壁画」をお見逃しなく
2018年11月20日(火)
先日、名古屋美術館(中区伏見)開館30周年を記念したベストセレクション展に行ってきました。同展で初公開されている「東山動物園猛獣画廊壁画」を見るためです。この壁画は三枚の油彩画で、動物が少なくなった戦後の東山動植物園に数年間だけ飾られました。現在は、名古屋市美術館が所蔵しており、特別展示で11月25日まで公開しています。
【名古屋市美術館・特別展】
【壁画No.1_作者:太田三郎】
【壁画No.2_作者:水谷清】
【壁画No.3_作者:宮本三郎】
実物の壁画を見るのは今回がはじめてです。作品は「北極・南極」「熱帯雨林」「アフリカ」とモチーフが3つに分かれていて、各地域に生息する動物が細かく描かれています。どの作品も、野生動物の生命力や躍動感が見る側に伝わってきます。縦1.4m、横5.4mという巨大キャンパス画ならではの迫力です。
作家はそれぞれ中部を代表する3人の画家がそれぞれを担当して描きました。実際にモデルとなる動物がいないので、描くのに相当苦労されたのではないかと想像しています。それでも、本物の動物が見たいという子供たちの夢や、再び本物を見てみたいという大人の想いを少しでも癒したいという気持ちで創作されたのだと思います。
東山動植物園で公開されたのは、ちょうど70年前の今月になります。秋の深まる頃で、現在のカバ舎プールに映る紅葉は当時も同じですが、本物の動物のいる現在は、幸い動物壁画を飾る必要はありません。戦争の影響により本物が見られなかった時代の歴史的な事実を改めて認識し、市民のために貴重な美術作品を残された当時の芸術家の気概に敬意を表したいと思います。
【旧爬虫類河馬館】
便利な世の中になり、手元のスマートフォンで動物の写真や動画を簡単に見ることができる時代になりました。でも、そうしたメディアをきっかけに、本物の動物を見に来られる来園者が逆に増えているように感じます。やはり、生きた動物を実際に見ることで、その大きさ・質感・迫力などを本当の意味で実感することできません。でも紅葉をバックに見る動物たちは別の意味で絵になりますよね。
【紅葉をバックの古代池】
動物園長 黒邉 雅実