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「飼育員は見た」

2017年10月07日(土)





『時と場所を選んでいる場合ではない。
 彼らには時間がないのだ。

 音もなく背後から忍び寄り、囁きかける雄。
 まんざらでもない気配で軽くかわす雌。

 追っては半ば強引に抱きかかえる雄。
 身をゆだねる雌。

 真昼の出来事。

 時と場所を選んでいる場合ではない。
 彼らには時間がないのだ。』


 虹色に輝く体色の彼らは、ノトブランキウス・フォールシ(Nothobranchius foerschi)。
 オスの色が派手な分、背びれでメスを抱きかかえる行為がわかりやすいかと思います。
 メダカの一生は短いですが、彼らはその最たるもの、「年魚」。
 一年で生を終えてしまう魚です。
 

 彼らの生まれ故郷はタンザニア。
 ピンと来られた方もいらっしゃるでしょうか、そう、「雨季と乾季のある環境」です。
 乾季になると川の水が干上がるため、魚たちは生きてゆけません。
 生後およそ3か月で成熟した彼らは、川が干上がる前に子孫(卵)を残すのです。
 水底に残った土のわずかな湿り気を頼りに、卵の状態で乾季を越えるのです。


 川は干上がり成魚たちは死に絶えてしまいますが、卵の姿で約2か月を過ごした子孫たちは、雨季に入ると孵化し、親と同じように3か月ほどで成熟し繁殖に臨みます。
 「時と場合を選べるほど彼らには時間が残されていない」とは、こういう背景からなのです。
 魚に限らず、もし園内で動物たちのこのような光景に出くわしたら、こんな背景があることも思い出し、現地の生活環境にも目を向けていただけたらなあと思います。

ノトブランキウス・フォールシ

動物園飼育第二係  加賀谷 優子

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