カワヒガイの繁殖
2017年08月28日(月)
「ヒガイ」
あまり聞きなれない名前の魚ですが、コイ科ヒガイ属の日本産淡水魚で、世界のメダカ館では自然生態ゾーンで飼育・展示しています。
名前の語源は、やせて弱々しいことを表す「ひがいす」という方言に由来するとの説があります。また、漢字では「鰉」と書きますが、これは明治天皇が好んで食されたことから「魚」へんに「皇」という字が当てられました。
ヒガイはタナゴの仲間と同じように、二枚貝に卵を産みつける独特の方法で繁殖します。世界のメダカ館でも、卵を産むためメスの産卵管が伸び、オスもメスを追う様子が見られたためイシガイやドブガイを水槽に入れて自然繁殖を狙いましたが、なかなか産卵してくれませんでした。そこでタナゴの仲間ではすでに人工授精による繁殖に成功していたので、その技術を使ってヒガイの人工授精を行いました。
ふっくらと膨らんだメスの腹部を軽く押すと、直径2.5㎜ほどの円に近い楕円形の卵が出てきます。産卵後しばらくすると4㎜ほどの大きさに膨らみ、形もまん丸になります。オスも同じように腹部を押して、出した精子を卵にかけ受精させます。その後、毎日水換えし、無性卵や中止卵を取り除くなど清潔な状態で管理すると、10日程でふ化します。ふ化した稚魚は1cmほどの大きさで、すぐに餌を食べ始めます。
今回行った人工受精では受精率が低く、8匹の稚魚しか得ることが出来ませんでしたが、この経験を元に繁殖技術を向上させていきたいと思います。このように世界のメダカ館のバックヤードでは、日々試行錯誤しながら魚たちの命を次世代に繋げるための様々な取り組みを行っています。
動物園飼育第二係 佐藤 正祐