重要文化財温室前館保存修理工事の近況など
一昨年9月に始まった重要文化財温室前館の保存修理工事は、今年の3月までに解体・調査や鉄骨補修などを行う第一期工事が終わり、建設当初の姿に復原する第二期工事の準備を進めているところです。
第一期工事の作業が終わりに近づいた昨年の11月から、建設当時の鉄骨組みの全容を現した温室を、たくさんの皆さんに見ていただき、知っていただこうと、工事見学会などを開催してきました。
今年3月の見学会ではNHK名古屋放送局に取材、放映していただき、5月には日本建築学会東海支部(建築歴史意匠委員会)の皆様が視察に来ていただくなど、たくさんの方々に重文温室について知っていただくことができたと思います。
鉄骨部材をすべて溶接で組み立てた、繊細で美しい鉄骨建築。これが重要文化財に指定された大きな理由です。
溶接工法を採用したのは、部材を減らして温室内の植物に少しでも多くの光を届けるためでもあります
温室の中から見た鉄骨組みの様子。手前に写っているのは、植物の根が過湿状態にならないよう、地下水を遮るために敷いた切石層です。ここにも植物を大切にする配慮がされています。
3月26日と25日の2日間で約1,000人の皆さんに見学していただきました。
日本建築学会東海支部建築歴史意匠委員会の視察の様子。
写真は、発掘調査の結果、シダ室の地中から出てきた二重水槽です。
外側はコンクリート、内側はレンガを積んだ構造になっています。
ちょっと横道にそれますが、保存修理工事を進めながら、重文温室の過去の姿や変遷の経緯についても調べています。
シダ室についても色々なことが分かってきたので少し紹介します。
現在のシダ室は、昭和12年の開園時は「羊歯・水生・食虫植物室」といいました。水槽に水を張り、カミガヤツリ(古代エジプトで紙の原料としたパピルス草)といった水生植物などを展示していたことが古い写真や資料で分かっています。
昭和44年からは、動植物園を拡張整備し、温室を含めて新しい施設を整備していく計画(東山総合公園再開発計画)のもと、昭和47年に水槽を土で埋めて貴重なシダ植物の展示に模様替えしました。
この写真は、水槽を土で埋める前の昭和40年代の様子です。水槽内には熱帯スイレンやシュロガヤツリが展示され、また、天井から吊り下げられているフィロデンドロン(ヒトデカズラ)の気根やタコノキの葉も写っています。
これらの植物は、日本一の水生植物温室を目指して昭和51年に開設した現在の水生植物室に移され、今でも元気に育っています。
水生植物室始め温室後館は現在でも観覧できますので、ぜひ植物園に来て探してみてください。
保存修理工事がスタートした平成26年以降、工事見学会や重文温室の関連イベントなどに参加していただいた人数は、今年の春まつりまでに5,000人を超えました。
第二期保存修理工事に入ってからも、重要文化財温室の保存修理工事の様子や、重文温室にまつわる歴史などの話題を、たくさんの方々にお伝えしていきたいと思いますので、お楽しみに。
再生整備課 堀 透