東山における戦争の1ページ
2015年08月20日(木)
今年は終戦後70年ということで、カラーでよみがえる太平洋戦争という番組が放映されていた。私は途中から見たのだが、初めのほうで、戦地に送った各地の話題という中に、名古屋では東山動植物園の映像があったことを知人から聞いた。
東山の古い写真はデータ化して保存しているが、戦時中の写真もいくつか残っている。その中の1枚では4頭のゾウが運動場で台に乗って並び、1頭が何か文字の書いてある旗の竿を鼻で持っている。その文字には白のインク消しが塗られ、その上から文字が書かれていたが、その文字ははがれかけていてよく読めなかった。
そこで、元の写真を探し出して、白く固まったインク消しをはがしてみたら、写真自体一部はがれていたが、そこには「祝漢口陥落」と書かれていた。
調べてみると昭和12年の盧溝橋事件に端を発した日中戦争で、昭和13年10月26日に漢口(今の武漢)を日本軍が陥落した。写真の裏には新聞社の判で10月27日の日付があった。動物園のゾウにこのようなパフォーマンスをさせた当時の軍部のプロパガンダであったと想像できる。
なんとも腹立たしい写真であるが、先人の誰かも同じ思いで、この文字にインク消しを塗り、なにか他の文字を書いたのであろう。
動物園の動物に二度とこういったことをさせてはならないという思いと、こういった歴史的事実を伝えるために写真はそのままで保存しておくことにした。
動物園長 橋川 央