重要文化財温室前館の保存修理と“建物のお医者さん”
2015年02月09日(月)
昭和11年に建築され、完成当時“東洋一の水晶宮”と話題になった重要文化財温室前館ですが、さすがに80年余り経つと具合の悪いところが出てきます。
人間でも年を重ねると、悪いところを治すために入院して手術することもありますよね。東山動植物園の温室前館もそんな状態かもしれません。
ここで大切なのは、体を診断・検査して良くないところを治療し、必要なら形成外科的な施術により、健康な時の状態や姿に治してくれる“お医者さん”の存在です。
そこで5年前になりますが、温室前館をもう一度良い状態に戻すため、
“きちんと診断・検査して処方箋を書いてもらおう!”と、専門家による検討委員会を設置しました。
検討委員会では、建築や鉄骨構造、文化財保護、意匠、植物といった分野の先生方や文化庁の専門家から指導・助言をいただきながら、また、文化財保存が専門のコンサルタントさんの力も借りながら、保存と活用の計画づくり、耐震調査、建物や鉄骨部材の調査、修繕方法など、様々な角度から検討してきました。
こうしてできた“処方箋”に基づき、昨年8月に温室の工事に取り掛かかったところです。“手術”にあたる建物解体や鉄骨補修についても、文化財建造物の施工実績がある業者さんが、建物の具合を慎重に調べながら作業をしています。
重要文化財温室前館の保存修理は、これら多くの“建物のお医者さん”たちによって支えられているんですね。
先日2月5日に開催した第12回目の検討委員会では、保存修理の状況を見ながら、完成当初の姿に戻していく具体的な項目(現状変更想定項目)の案をまとめました。
重要文化財の保存修理では、出土した発見物や過去の痕跡などをしっかり調査検討しながら進めていく必要がありますし、特に、鉄骨造ガラス葺き建造物の文化財としては日本初の事例となるため、今後のお手本となるような仕事が求められています。
工事完了までは今しばらく時間がかかり、来園者の皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、きちんとした保存修理を行い、貴重な文化財を次の世代にしっかり残していきたいと考えています。
なお、温室後館は今までどおり観覧できます。暖かい館内は花と緑でいっぱいです。ぜひ見に来てくださいね!
再生整備課再生整備係 堀 透