卯年にちなんで
2011年01月03日(月)
新年おめでとうございます。
今年はうさぎ年。毎年、干支にちなんだ植物を思い浮かべてみるのですが、うさぎの名前をもつものは意外と少ないようです。
まず最初に思いつくのはウサギギク(キク科)。高山植物ですので残念ながら東山植物園では栽培していませんが、夏休みに立山に行った際に撮った写真があるのでご紹介します。タンポポぐらいの大きさの花で、一見ウサギとは何のかかわりもなさそうですが、花茎に対になってつく1対の細長い葉がウサギの耳に見えるところからついた名前らしいです。
初夏に清楚な白い花を咲かせるウツギ(ユキノシタ科)もウノハナ(卯の花)と呼ばれます。もっとも、この花の名前もウサギとは直接関係なく、旧暦の卯月(4月)に咲くことに因みます。
外国産の植物では、多肉植物のカランコエ(ベンケイソウ科)の仲間に「ツキトジ(月兎耳)」という名の植物があります。葉の表面に細かい毛が生えていて、ウサギの耳に見えなくもありません。ツキトジは観葉植物として簡単に入手できます。
ところで、ウサギに関する話題をもう一つ。
年末にお花畑にあるうさぎのオブジェのことをブログで紹介しましたが、この作品は画家・彫刻家の石川すみさんから昭和63(1988)年に寄贈されたものです。植物園も毎年秋の「緑の中の彫刻展」でお世話になっております。
石川さんはうさぎをモチーフにした作品を数多く作っておられます。石川さん自身は卯年生まれではないのに、何故うさぎの作品が多いのか尋ねてみましたところ、次のような話をうかがいました。
――戦後間もないころ、結核で長期の療養を余儀なくされていた私に、父が一冊のスケッチブックを置いてくれました。これが私と絵との出会いでした。私が元気になるようにと父はうさぎなどを飼ってくれたりして、病床の私はそれらの動物たちを描いて過ごしました。これが私と絵との出会いであり、うさぎのモチーフの原点でした。
今元気に創作を続けていけるのも、その時の家族をはじめいろいろな人たちの支えがあったからこそです。感謝の念をこめて、今でもうさぎを作り続けています。――
植物園に寄贈された風のオブジェ「うさぎ」も、そのような感謝の気持ちを表した作品だったんですね。年末の手入れのこともお伝えしたら、たいへん喜んでいらっしゃいました。
石川さんは御年八十ん歳にもかかわらず少女のように天真爛漫なお方で、今なおかくしゃくとして創作活動に励んでおられます。2月にはノリタケの森ギャラリーで個展を開くそうですので、ぜひ見に行こうと思っています。
植物園緑地造園係長 松原 裕隆