野生のニホンザル侵入〜そして保護へ
4月29日朝、新しいニホンザル舎南側の障壁の上に、野生のニホンザルが現れました。最近、名古屋市緑区〜天白区で目撃されていた「はなれザル」と思われます。
以前、カッパが逃げ出したこともあったため、発見した飼育担当者もかなり驚いたようです。
「はなれザル」とは、性成熟した若いオスのニホンザルが、別の群れを探すため、今まで暮らしていた群れから離れ、単独で移動するサルのこと。通常は秋頃に多くみられ、名古屋市内においても、1〜2年に1件程は目撃されることがあります。
今まで一人ぼっちで寂しかったのでしょうか、その日は一日中運動場横の桜の木や、時には障壁の上に登り、東山のサルたちと顔合わせをしていたようです。
翌日(4月30日)朝8時頃、障壁の上を移動して、観覧デッキ上まで来て、運動場にあるエサの落花生を見つめていました。
私たちが観察しているその時、観覧デッキのこの位置からゆっくりとお尻を下にして運動場に降りてしまいました。
そして、ウッドチップの中に埋もれている落花生をおいしそうに食べ始めたのです。
少し運動場を走りまわった後、ロープを使い鉄塔の上まで登りました。新ニホンザル舎が気に入った様子で楽しそうでした。
東山のメスザル達は少し驚いたようでしたが、落ち着いていました。
長老メスザルに挨拶したところ威嚇され、逃げて獣舎オリの中へ入りました。
これ以上のトラブル発生は危険と判断し、扉を閉めて保護しました。
現在は、動物病院で健康診断を受けています。とても元気です。
以前、新ニホンザル舎は「カッパ」が想定外のジャンプで逃げ出してお騒がせしたところです。逃げ出さないよう追加改修工事を行い、脱出防止には万全を期していましたが、市内には野生ザルの生息もなく、今回の侵入はまさに想定外でした。
長期間にわたり単独で行動していた野生ザルが、寂しさに耐えられず、東山のニホンザルたちの仲間入りがしたかったのでしょうか。
また、「人間と自然との共生・調和」をめざした新ニホンザル舎の出来映えがよく、野生ザルでも住みたくなる施設だったのでしょうか。
動機は良くわかりませんが、いずれにしても少しうれしくなるような出来事でした。
今後、この野生ザルについては、本来の野生の生息地に戻り、新しい群れに仲間入りして暮らすことが一番幸せだと思います。
今は未定ですが、そうできるよう検討していきたいと考えています。
動物園飼育第一係長 茶谷 公一