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オーストラリアに生息する動物たちの豆知識(その2)

2020年04月29日(水)

今回はカンガルーを取り上げます。
まずは、4月20日にカンガルー舎で撮影した以下の動画をご覧ください。
画面中央右寄りに写っている、アカカンガルーのオスの「はじめ」に注目です。

「アカカンガルーの吐き戻し行動」

頭と前足を振り、さらには首を反らして苦しそうにも見えるこの行動、実は胃の内容物を口に戻しているのです。
首を反らし終わった後の映像の口に注目してください。
もごもごと動かしています。

一旦飲み込んだものを口に戻す動物と言えば反芻を行うウシが有名ですが、実はカンガルーもウシと同じく大きな胃を持ち、その中に棲まわせている微生物の力を借りてセルロースなどの繊維質を消化します。

ウシは反芻することで繊維質を再咀嚼して物理的に粉砕するとともに、唾液を大量に分泌させて胃内微生物の働きを活性化します。
カンガルーについてはどうしてこのような吐き戻しをするのかよく分かっていませんが、ウシの反芻とは意味合いが異なるようです。

カンガルーの場合は、吐き戻した食べ物はすぐに飲み込んでしまいますし、吐き戻し自体がウシの反芻ほど頻繁には見られません。
ウシは1日に6~10時間も反芻に費やすようですが、アカカンガルー5頭を1時間ほど観察しても、映像のような動きが見られたのは2頭にそれぞれ1回ずつだけでしたし、2回ともせっかく吐き戻したものを1分もしないうちに再び飲み込んでいました。
担当の飼育係員に尋ねても吐き戻しの頻度は、だいたいそれくらいとのことであり、文献にあたったところ「カンガルー類では(中略)胃内容を口までもどし、のみもどすことがある(かみなおしはしない)」とありました。

真の目的が何であれ、カンガルーでは、この吐き戻しを行った母親が仔の口の周りをなめることで(あるいは仔が母親の口をなめることで)、母から仔へ胃内微生物の受け渡しをしているのではないかと思います。

ちなみに胃内ではなく、盲腸内に繊維質の消化に必要な微生物を棲まわせているコアラの場合は、仔が母親の肛門から出る「パップ」と呼ばれる微生物を多く含んだ特別な糞を食べることで受け渡しを行います。

動物園教育普及等担当主幹 今西 鉄也

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