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どっちが正解 第2章

2018年11月25日(日)

みなさんは植物図鑑を見るときに科や属などの分類体系を気にしたことはありますか?植物の階層的分類は、上位から目(もく)、科(か)、属(ぞく)、種(しゅ)の順になっています。

では少し古い図鑑と最近の図鑑を比べてみてください。同じ植物なのに科が変わっています。なぜなんでしょう。

実は技術の進歩によるものです。以前は主にマクロ形態(植物の花や葉、茎の形)による分類体系が支持されてきました。しかし20世紀末になると直接生物のDNAを取り出す手段が開発され、それにより初めて物理的な証拠に基づく分類体系「APG分類体系(Angiosperm Phylogeny Group=被子植物系統研究グループ)」が1998年に発表されました。その後さらに多くの植物を分析した結果、現在は2016年に発表された「APGⅣ」が最新版です。ではどのように変わったのでしょうか。

例えばマクロ形態により分類されたエングラー分類体系ではユキノシタ科に入っていたアジサイ属は、APG分類体系ではアジサイ科として独立(分離)しました。外見からすれば、小さなユキノシタとアジサイは、一見別の植物にみえるものの、花の特徴などは共通するので、科のレベルでは同じとみなされていました。同様にエングラー分類体系ではカエデ科、トチノキ科、ムクロジ科に分類されていた植物は、APG分類体系ではムクロジ科に統合されました。他にもユリ科、ヒガンバナ科の再編などAPG分類体系によって科の見直しが多くなされています。

これを受けて東山植物園でも植物の樹名板をエングラー分類体系からAPG分類体系の分類表記に順次更新しています。
しかし園内の樹名板は数が多いため、一度に更新ができません。現在はエングラー分類体系とAPG分類体系の樹名板が混在しています。
ではエングラー分類体系が間違いかといえばそうではありません。要は考え方の違いです。しかし遺伝子の分析によるAPG分類体系は、研究者によって形質の解釈が異なる形態的な分類とは根本的に異なるため、今後大きく変わることはありません。

①アジサイ.jpg

【アジサイ(アジサイ科)】

②ユキノシタ.jpg

【ユキノシタ(ユキノシタ科)】

③ムクロジ.jpg

【ムクロジ(ムクロジ科)】

④イロハモミジ.jpg

【イロハモミジ(ムクロジ科)】

⑤メグスリノキ.jpg

【メグスリノキ(ムクロジ科)】

⑥アジサイ(科名変更の説明).jpg

【アジサイ(科名変更の説明)】

⑦ムクロジ科(旧科名 カエデ科).jpg

【ムクロジ科(旧科名 カエデ科)併記】

⑧街路樹 カエデ科の表記のまま.jpg

【街路樹 カエデ科の表記のまま】


どうですか。「樹名板 奥深し‼」でしょ。みなさん、細かいところまでしっかり観察してくださいね。


○お知らせ○
植物園では見ごろの植物の情報を花マップで提供しています。
ご来園の際はぜひご利用ください。

植物園緑地造園係長 太田 幹夫

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