優雅に舞う蝶 アサギマダラ(野はらビオトープ、カラマツ林、宿根草園、お花畑ほか)

2026年10月12日(月)

事務所がにわかに騒がしくなってきて、「見た?」、「見てない」、「もう飛んでる?」、「うん」などといった会話が聞こえてきます。

渡り蝶のアサギマダラの話題です。

この時期にみられ南下していくそうです。沖縄や台湾あたりまで渡っていく蝶。

長旅をするようには見えない、優雅に舞う品のある姿に、思わず、自分の身を正してしまいます。
アサギマダラ.JPG

植物園でよく見られるのは好みの花がそろっているからでしょうか。

今年は、スズカアザミ(野はらビオトープ、カラマツ林)、フジバカマ(宿根草園、お花畑)の花に来ています。以前は、コウヤボウキ(合掌線)にも来ていました。いずれもキク科の植物です。甘い蜜があるのでしょう。

アサギマダラは植物の成分を薬物として利用しているそうですよ。雄はヒヨドリバナやフジバカマなどの花から「ピロリジジンアルカロイド」という、脳や胸部の中枢神経系に作用する成分を摂取し、行動を活性化させる物質の量を増やしているのだそうです。

アサギマダラは、マダラチョウ科の仲間の蝶で、ほぼ日本全国に分布していて、成虫は、春から夏にかけて南から北へ移動し、移動先で世代を重ねた後、秋になると南へ移動するのだとか。低地では、長さ数ミリの幼虫がガガイモ科のキジョランの葉の裏側で身を寄せ合いながら越冬するそうで、春になって気温が上昇すると、キジョランの葉を食べて成長・羽化して、夏の生活の場である山岳地へ登っていくとのことです。

アサギマダラが、どうして長距離移動するのか、どこに海を渡るだけの体力を蓄えているのか、見知らぬ土地でどうして方角がわかるのかなどはわかっておらず、謎の多い蝶だそうです。

10年以上前のことですが、東山動植物園ではアサギマダラのマーキング調査をこの時期に数年継続して協力していました。フジバカマやアザミに来るアサギマダラを捕獲し、場所、月日、捕獲者名を傷を付けないように慎重に羽に記し、記録後に離す、という調査でした。

その時は、富士付近でマーキングされたアサギマダラが、ここ東山動植物園で確認されたそうです。驚きますね。

アサギマダラマーキングH21.10.18 (19).JPG

アサギマダラに出会えるかは、偶然が必要かもしれません。

いつでも出会えるわけではないからこそ、楽しく神秘的なのです。

仏文学者の野内(2008)は、「偶然」は人びとの関心性と意外性の有無、必然性の否定に関連するとして、日本人は、条件付きで偶然を受け入れ、たまたま目撃される偶然の「妙」を喜び、楽しむのだと述べています。

アサギマダラの中継地である東山動植物園にお越しいただき、野内のいう「偶然の『妙』」を味わいませんか? そして、アサギマダラの好きな花たちの姿も観察してみてくださいね。

引用文献
朝日新聞社(1997)「朝日百科 植物の世界」3巻 3-74
アサギマダラのマーキング調査|オフィシャルブログ|東山動植物園
野内良三(2008) 偶然を生きる思想「日本の情」と「西洋の理」. 日本放送出版協会
チョウが植物の成分を薬物として利用することを発見!|ニュース&イベント|玉川大学 大学院
アサギマダラ - 東京都 高尾ビジターセンター

植物園 大橋

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