アキありがとう。
2023年09月05日(火)
今から38年前の1984年4月、私がオランウータンの担当になった時にはまだアキはお母さんのおなかの中でした。
半年後の9月13日にアキは生まれたのですがその当時母親のプリ―は体調不良で、通常出産時の赤ちゃんの体重は雌では1500g程度ですが、アキは半分ほどの830gしかありませんでした。しかも、両指に障害があり体も弱く、すぐに下痢をして風邪もひいておりました。そのような状態でしたのでアキは「人工哺育」つまり飼育員の手で育てました。アキの体調管理には気を使い、私は夜も心配でたまりませんでした。
その後、元気になった頃に、日光浴と運動を兼ねてオランウータン舎の横でお客さんとのふれあいをしたところ、たくさんのお客さんと触れ合い大人気となりました。この頃からアキも人が大好きになりました。
アキが妊娠した時は動物園職員皆大喜びをしました。
2005年3月5日出産しましたが、残念ながら12日後に子供は亡くなってしまった。
アキは亡くなった子供を大事に抱っこしてなかなか離そうとはしません。毎日アキにもう赤ちゃんは死んでしまったから渡してと説得し、数日後アキに納得してもらって亡くなった子供を渡してもらいました。その時のアキの落ち込みは激しく食欲も元気もなくなってしまいました。
そこでアキにお絵かきをしてもらい少しでも気を紛らせて元気になってもらおうと時間のある時にはお絵かきをしてもらいました。
2015年から5年間オランウータンの担当から外れたのですが、その間一度も顔を出すことなく他の動物の世話をしていました。
またオランータンの担当に戻って5年ぶりの再会をした時のアキの大荒れの歓迎にはビックリしました。すぐに以前の関係に戻ったのですが、まさかこのような歓迎を受けるとは思ってもいなかったのでとても驚きました。
私のオランウータン担当の全ての時間は、アキと共にオランウータンについて勉強してきた時間となります。
アキの事を語り出したら、何日あっても語り足りません。
最後まで私に語りかけて優しい目をしていたアキをいつまでも忘れることは出来ません。
アキの死亡という残念な事となってしまいましたが、献花台に毎日大勢の人が来られて手を合わせてもらえ、アキがいかに大勢の人に愛されていたかという事が改めて知らされました。
アキの事を最後まで応援して下さった皆様ありがとうございました。
動物園飼育第二係 木村 幸一
スマトラオランウータンのアキが8月6日亡くなり、もうすぐ1カ月が経とうとしています。
このブログでもたびたびアキの病状を報告させて頂き、たくさんの方々に「がんばって」「元気になってね」と応援いただいていましたが非常に残念な結果となってしまいました。5月半ばの治療から、やや体調を取り戻していたアキですが、8月3日に病状が急変し、6日の朝、亡くなっているのを確認しました。
元々穏やかな性格のアキは、治療中1日5回の経口投薬にも快く応じてくれ、体が辛いこともあっただろうに、飼育員にも獣医師にも穏やかな態度で接してくれて、本当によく頑張っていました。
アキの献花台は、朗らかなアキらしい明るいお花とお手紙であふれていました。
献花台へ足を運んでくださった方々、温かいメッセージをくださった方々、本当にありがとうございました。
たくさんの方から
「アキちゃん!って呼ぶとこっち来てくれてね、じーっとこっちを見てくれるのよ」
などとアキとの思い出話を伺い、改めてアキがたくさんの来園者の方々と楽しい時間を共に過ごしていたのだな、、、と実感しました。
長生きをすれば60歳以上にもなるオランウータン、38歳は早すぎる死でした。
アキとやりたいことは、まだまだたくさんありましたし、穏やかで温かいアキとのお別れはとても悲しく、悔しいですが、アキが教えてくれたこと、アキと過ごした穏やかな時間を大切に、姉のネオや他の動物たちとの時間を大切にしていこうと思います。
アキの治癒に向けて応援していただいた皆様、アキに手を合わせに来て下さった皆様、ありがとうございました。
アキ、たくさんの素敵な時間をありがとう。
動物園飼育第二係 武田 梓