令和8年2月15日(日)に第42回東山再生フォーラムを開催しました。【開催概要】

2026年03月04日(水)

令和8年2月15日(日)に第42回東山再生フォーラムを開催しました。
今回のフォーラムでは、「野生動物とともに生きる~クマ・キツネと人との関係~」と題しまして、岐阜大学の橋本操先生、日本福祉大学の福田秀志先生のお二人をお招きし、中部地域のクマの現状と 知多半島のキツネの生態・保全活動についてお話しいただきました。
野生動物の出没が社会的に注目される中、研究者のお二人のフィールド経験に基づく深い知見が詰まった、とても学びの多い時間でした。

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橋本先生は、ツキノワグマなどの大型哺乳類を中心に、地域住民の獣害対策や、獣害や野生動物に対する地域住民の意識、狩猟などの山間の生活文化などについて研究されています。
講演では、中部地方におけるクマと人との関係について、歴史と現代の状況を踏まえたお話をいただきました。お話の中では、クマが近年急に増えたわけではなく、もともと人の生活のすぐそばに存在していたことが取り上げられました
 近年、市街地でのクマの出没が増えた背景には、近代から昭和20年代と比べて、里山利用の減少、裸地化した森林の回復、どんぐりの凶作、ハンターの高齢化など複合的な要因があること、また、一度市街地で食べ物を得た個体は"学習"により繰り返し出没するため、食糧へのアクセスを断つことが重要であると説明されました。
人が取れる対策としては、生ゴミや柿の木の管理、電気柵など"人間側の環境整備"が基本になること。さらに、クマが利用しやすい空間と人の生活圏を整理する「ゾーニング」、地域全体での目撃情報共有、長期的なモニタリングの重要性にも触れられました。
 出没問題は「駆除か否か」だけで語れず、環境や社会の変化と密接に関わる複雑なテーマであることが伝わる内容でした。

<橋本先生の講演の様子>

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福田先生は知多半島の里山に関する研究を中心に進め、とくに童話「ごんぎつね」ゆかりの地でキツネの生息状況や生態研究を進めていらっしゃいます。
講演では、知多半島におけるキツネの生態研究と、地域で広がる保全活動について紹介していただきました。知多半島では昭和30年代にキツネがほぼ姿を消したとされていましたが、1990年代後半に再発見されたことが研究の出発点になったとのことです。当時はフィルム式の自動撮影機を用いた地道な調査で、少しずつ証拠を積み上げ、確かな生息が確認されていきました。
知多半島の里山は、山、畑、ため池などが入り組んだモザイク状の環境が特徴ですが、近年は利用する人が減り、放置林や外来植物の拡大など、人の手が入らなくなったことで環境が変化しています。その影響がキツネを含む野生動物の行動にも現れることを、フィールドワークを通して明らかにしてきたと述べられました。GPS装着による追跡結果では、発情期に10〜20km移動する一方、普段は狭い範囲で暮らし、メガソーラー施設や童話「ごんぎつね」の舞台の山など多様な場所を利用していることも紹介されました。都市化が進む地域でも、現代の風景に合わせて柔軟に生きる姿が印象的でした。
講演後半では、キツネが地域の象徴として人と自然をつなぐ役割を担い得ることが語られました。知多半島では、キツネをテーマにした環境教育、NPO・行政・大学の協働による活動など、地域の自然を見直す動きが広がっており、「キツネを守ることは里山を守ること」この考え方は、野生動物への理解が地域の環境保全全体へとつながる例として示されました。

<福田先生の講演の様子>

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その他に、再生整備課長の中根より、近年の再生プランの取り組み状況や、サバンナエリアの計画をはじめ今後取り組んでいく事業などについて報告しました。

意見交換では動植物園が発信すべき環境教育メッセージについて議論が深まりました。橋本先生からは、ご自身が所属するNPO法人信州ツキノワグマ研究会の取り組み例として、茶臼山動物園での野生動物の保護・保全の普及啓発活動が紹介され、「動物園は本物の野生動物を知る場として極めて重要」との指摘があり、実際に本物のクマを見ることでネコやタヌキをクマと見間違えるような誤認通報の減少にも役立つと説明がありました。福田先生からは、若者世代がなかなか自然や野生動物に触れる経験を得られないエピソードが紹介され、「動植物園は身近な自然を知る入口となる」との意見をいただきました。来場者からの質問も交えつつ、地域社会における地域の自然とつながる動植物園の役割を再確認する時間となりました。

<意見交換の様子>

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 講演には、約70名の方にご参加いただき、皆様貴重なお話に熱心に耳を傾けていらっしゃいました。今後も皆様にご満足いただけるような再生フォーラムを企画してまいります。


東山総合公園 再生整備課

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