サバンナの思い出(3)
2022年08月05日(金)
2004年に訪れたケニア共和国の思い出をまとめたアフリカ紀行の第3回です。前回のブログでご紹介しました自然公園から車で約7時間。今回はアンボセリから約400㎞離れたナクル湖自然公園を訪問したときのお話です。
ナクル湖はケニアの大地溝帯の中にある水深の浅いアルカリ湖で、フラミンゴが好んで食べる "スピルリナ" と呼ばれる植物性プランクトンが大量に発生する餌場です。そのため多くのフラミンゴが飛来しており、水辺はまるでピンク色の花びらをちりばめたようでした。
よく見るとフラミンゴはオオフラミンゴとコガタフラミンゴの2種で、他にもモモイロペリカン アフリカハゲコウがいました。 現在は数が減ってきているようですが、当時、現地のガイドさんに聞いたところによれば、アフリカでフラミンゴの群れが見られる湖はいくつかあるが、その中で特に規模の大きいのがこのナクル湖とのことでした。フラミンゴの美しいピンク色は、塩水湖に生息するプランクトンが深くかかわっているのをご存じですか。この植物性プランクトンにはβ(ベータ) カロテンが多く含まれ、これを食べることで羽が鮮やかに染まります。ニンジンの赤い色素も同じ成分です。ちなみに動物園のフラミンゴ用のフードにはβカロテンが人工添加されていて、そのおかげで羽の色は美しくが保たれてます。 フラミンゴの美しい羽色にはこのような秘密があるのです。
この自然公園は野生動物の「移入」プロジェクトでも知られています。「移入」とはある地域では絶滅してしまったライオンやシロサイといった大型肉食獣・草食獣を他の地域から移して定着させることで、生態系の回復や個体数の増加を図る試みです。 当時の自然公園内で見られたシロサイも本来はここにいる動物ではありませんでした。こうした取り組みは本来の生息地とは違うので生息域外保全と呼ばれます。野生生物の種保全は、本来の「生息地の保全」と動物園や保護センターといった「生息域外の保全」が車の両輪のように進められることが理想です。次回はナイバシャ湖自然公園に向かい、ボートサファリにチャレンジします。お楽しみに!
東山動植物園では南米産のチリーフラミンゴとベニイロフラミンゴを本園の古代池で飼育展示しています。
また、8月は動物園としては3年ぶり、植物園としては5年ぶりとなる東山動植物園ナイトZOO&GARDENが開催されます。新型コロナウイルスの感染者が急増しているところですが、基本的な感染症対策に留意しながら、この機会にぜひご来園下さい。
動物園長 黒邉雅実