巻きひげ。
2020年07月30日(木)
皆さんは蔓植物(つるしょくぶつ)を知っていますか。
蔓植物とは、茎が細長く伸びてつる状になり、自力では直立できない形態の植物の総称。〈出典:花と緑の事典 六耀社〉です。
具体的にはフジのように茎で直接巻きつくもの、キュウリ、ゴーヤ、ヘチマ、カラスウリのように葉が変形した巻きひげによって支柱に巻きつくもの、カギカズラのように小枝が変形した鉤(かぎ)によってよじ登るもの、ヘデラのように吸着根によってよじ登るものなどがあります。
◆ところで、そんな蔓植物ですが、皆さんはじっくり観察したことがありますか。
例えば、つるの巻き方は、ほとんどの種では決まっていて、例えばアサガオ、ヤマノイモ、ヤマフジは右巻き(右肩上がり)、一方ノダフジ、ヘクソカズラは左巻き(左肩上がり)です。
そしてもう一つ、見逃せないのが巻きひげです。巻きひげは、先端が支柱などに巻き付いて両端が固定されると、その中間付近を起点に両端に向かってねじれが進行していきます。そして中途にバネの向きが逆転して、両側に逆向きのバネが同数つくられます。
❖それではヤブガラシ(ブドウ科)でその様子を観察してみましょう。
【巻きひげは最初、渦巻き状に巻いた状態になっています。】
【やがて巻きつく先を探して、先端がまっすぐ伸びます。】
【そして先端が何かにしっかり巻きついて両端が固定されると、その間の部分がらせん状に巻いていきます。】
◆たったこれだけのことですが、実はこれがすごいことなんです。もし両端が固定された状態で、その間の一部分が一方向だけにねじれた場合は、どこかで巻きひげがねじ切れてしまいます。そのため巻きひげは、中途で巻く方向を変えることで、一方向に巻くことによって生じる歪(ゆが)みを解消して、ねじ切れないようにしています。
❖植物園の花/今はアオイ科の花が見ごろになっています。
【ムクゲ:アオイ科】園芸品種
【ムクゲ:アオイ科】園芸品種
【モミジアオイ:アオイ科】
【モミジアオイ:アオイ科】
【ハマボウ:アオイ科】
【タイタンビカス:アオイ科】園芸品種
【タイタンビカス:アオイ科】園芸品種
【タイタンビカス:アオイ科】園芸品種
【ヤブミョウガ:ツユクサ科】
❖植物は役に立つ。
実際に植物をよく観察することで、発明されたものもたくさんあります。例えば野生のゴボウの実をヒントに発明されたマジックテープ、ハスの葉の表面構造をヒントに発明された撥水性(ロータス効果)の構造などはよく知られています。
【ハス:ハス科】雨が水滴になっています。
もしかすると将来、植物をヒントに、すごい発明があるかもしれませんね。
植物園緑地造園係長 太田幹夫