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東山動植物園の歴史

9.平成20年代

再生プランの推進

平成22年5月に再生プラン新基本計画を発表。従来の計画に「現存する歴史的施設や樹木、景観に配慮すること」「市民により一層楽しんでいただくこと」が新たな視点として加えられた。 新基本計画をベースに再生プランが本格的に進み、シンリンオオカミ舎、アメリカバイソン舎のある北アメリカエリア、アジアゾウ舎、ツシマヤマネコ舎など次々と新しい施設がオープンし、園内の景色は年々変わっていった。ここまで変貌を遂げたのは昭和40年代~50年代に実施した「東山総合公園再開発計画」以来といえるだろう。

アジアゾウの出産~ゾージアムの完成

平成19年7月、スリランカからアジアゾウのアヌラ(来園時5歳)とコサラ(同3歳)が来園、平成25年1月29日には待望のメスの赤ちゃん(さくら)が誕生した。アジアゾウの出産は、東山が開園して初めてのことであり、また、日本人スタッフのみでアジアゾウの出産に成功したのは、国内の動物園で初めてのことだった。同年9月にはアジアゾウのふるさとスリランカをイメージした新しいアジアゾウ舎「ゾージアム」が完成した。
国内最大級の広さ(3,350㎡)を誇り、ゾウのメスを群れで飼育できるようになり、オス専用の飼育スペースも確保された。運動場には大プール、寝室はミストや自動温水シャワーが完備され、ゾウの足のケアのため床面を樹脂にするなど動物福祉にも配慮して設計された。また、ゾウの保全、ゾウの生態、ゾウ列車についても学べる展示も併設し、来園者が東山のゾウについて楽しく知ることができるようになった。

完成したアジアゾウ舎「ゾージアム」
完成したアジアゾウ舎「ゾージアム」

ゴリラの同居からシャバーニブーム

平成19年6月、姉妹動物園であるオーストラリアのタロンガ動物園から、オスのシャバーニ(1996年生まれ)が来園した。待望のオスゴリラの来園である。当初は4頭でのゴリラの群れづくりを目指すも、最高齢のオキとシャバーニが反発しあったため、オキとアイ、ネネとシャバーニの2つのグループに分けて展示することになった。

平成22年12月30日にオキが53歳(国内最高齢)で亡くなり、動物園葬を挙行した。その後、ネネ、シャバーニ、アイの3頭同居を開始し、平成24年11月1日にネネがシャバーニとの間に待望の第2子となるキヨマサ(オス)を出産した。ネネは40歳での出産となり、自身の持つ国内最高齢出産記録を更新した。

平成25年6月2日にはアイがアニー(メス)を産んだが、アイは上手く子育てができなかったため、アニーを人工哺育で育てることとした。生後すぐに開始した同居訓練により、平成26年11月にアニーをゴリラの群れに戻すことに成功した。人工哺育のゴリラを群れに戻すのに成功したのは日本で初めてのことだった。

平成27年の春頃には、シャバーニがイケメンゴリラとしてSNSで話題になったのがきっかけで全国的に大人気となった。2頭の子供の面倒をみる姿がイクメンとして更に人気を呼び、インターネットや海外のテレビなどを通じて世界に拡散し、写真集、絵本を始め多くのグッズが発売されるまでの大ブームになった。

環境教育プログラムのスタート

近年動物園においても、自然科学の分野への興味や理解を深めるだけでなく、環境に配慮した行動のできる人を育てる「環境教育」が重要視されている。そこで東山動植物園は平成19年に「東山動植物園環境教育基本計画」を策定し、平成21年に環境教育プログラムとして、「クマと人との共存」「ゾウのトレーニング講座」など小中学生をはじめ親子でも楽しみながら学んでいただける環境教育プログラム11種類を新たに開講した。

本プログラムは生きた動植物を素材として、生態系に関する問題を中心に、その出会いから始めるさまざまな講座を用意しており、受講者が動植物に興味を持ち、動植物が置かれている現状への理解を深め、環境問題に取り組むための判断力を身につけるものである。

平成28年には、講座数が35講座にまで増え、年間約1万人も参加する充実したプログラムとなっている。

更なる国際交流 絶滅危惧種の保護事業への参加

平成24年8月、メキシコ市との姉妹都市提携35周年を記念して、メキシコのチャプルテペック動物園と姉妹動物園提携を行った。姉妹動物園の提携は、昭和44年のロサンゼルス動物園(アメリカ)、平成8年のタロンガ動物園(オーストラリア)以来のことである。翌年8月にはメキシコ市郊外の火山周辺にある丘陵地のみに生息する固有種であるメキシコウサギ10頭(オス4頭、メス6頭)がメキシコから来園した。

メキシコウサギは神経質な性質で気性が荒く、飼育や繁殖が非常に難しいといわれるが、平成26年には、国内の動物園で初めての繁殖に成功した。

また、世界動物園水族館協会が策定したスマトラトラの国際種保存計画の参加、国内では環境省の行う長崎県対馬だけに生息する野生ネコであるツシマヤマネコ、濃尾・大阪・富山の3平野のみに生息する日本固有の淡水魚イタセンパラの保護増殖事業に参加するなど、絶滅危惧種の飼育・繁殖にも積極的に関わっている。

二つの事件(ニホンザルの逃走~鳥インフルエンザの発生)

平成21年、ニホンザル舎リニューアルオープンの1週間前、二ホンザルのカッパ(メス)がリニューアルしたばかりの運動場の擬木を足場に4m壁を乗り越えて逃走した。(5日後に捕獲)。これを教訓に壁を2mかさ上げしたが、平成24年、2年前に野生からニホンザル運動場に侵入したムコドノ(オス)が脱走不可能と考えていた6m壁を越えて園外に逃走した。そのため足場となった鉄塔の撤去を余儀なくされるとともに、動物の予想を超える能力を改めて認識することになった。

平成28年12月6日に胡蝶池から隔離していたコクチョウ1羽が死亡し、鳥インフルエンザの簡易検査で陽性となった。国内での高病原性鳥インフルエンザの発生を受け警戒を行っていた中での出来事であった。

さらに12月10日には古代池から隔離していたシジュウカラガン1羽が急死し、園内複数箇所での発生が疑われたため、12月11日から動物園エリアを休園することになった。台風、園の工事、イベント準備以外で休園になるのは戦時中以来のことであった。園内の消毒や、人や車両の入場規制、胡蝶池及び古代池の消毒及び水抜きなどの防疫対策を行うため、翌年 1月13日に再開園するまで、約1か月間休園を余儀なくされた。

この2つの事件は、今後の動物展示方法の新たな課題となるとともに、これを教訓にして、今後の動物園の運営に生かしていかなければならない。

日本を代表し、世界に通用する動物園を目指して

動物園には、「動物を見て楽しむ」「楽しく学ぶ」「生き物を守る」「調査研究を行う」の4つの役割がある。近年は動物たちの生息している自然環境の理解を促す「環境教育」と絶滅へ進む野生動物について飼育下での繁殖に取り組む「種の保存」が特に重要視されている。希少種をひとつの動物園で繁殖し、種として保存していくには限界があり、国内あるいは世界の動物園とネットワークを結び、日本を代表する動物園としてリーダーシップを発揮し、世界とも協力して、国内外の希少動物の保全を進めることが、ますます重要となる。 また、開園100周年となる2037年まで継続する再生プランは、エリア別に施設の改修を進めており、平成30年度は第二期整備計画の目玉として、アフリカの森エリアに新チンパンジー・ゴリラ舎のオープンを目指している。動物園の先進国である欧米は日本より飼育基準が厳しく、例えば獣舎面積が小さいと動物を提供してもらえない。このため、新施設では飼育環境を欧米基準にする必要があります。

このように、施設面の充実、環境教育の推進のためには、 多くの市民の皆様や企業様のご支援・ご協力が不可欠であり、応援いただけることで、さらに愛される動物園となる。そして、国内外の希少動物の保全を進めることは地球貢献であり、ひいては名古屋市民が誇りに思う東山動植物園の実現につながると考える。

野生動物を通じて多くの皆様に感動を与え、100年後も200年後も日本中、世界中の人々に愛される動物園を目指して・・・

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